先週から傳修院で伝法を始めた三相四十行相は、
無常、苦、無我の三相を、
様々な側面から多層的に観る観法です。
例えば或る現象群、
心臓なら心臓という無数の色(しき)の連続体を、
四十の視点から識別・考察し、
内在する無常性、苦性、無我性を、
徹底的に暴き出していきます。正に至福かな!

豊かで平和な世界は、
多くの人々の努力で作られ維持される、
本質的には表層的で脆弱なものです。
恒久・安定と見てはいけません。
世界はいつでもガラガラと崩れうるのです。
自身を守るには貪瞋痴を離れ、
今この瞬間を淡々と観察していくしかありません。
菩提心だけが私達を救ってくれるのです。

最後の一切れのチーズが欲しければ、
隣りの人に与えなさい。
誰かに怒りを感じているなら、
その人にプレゼントを送りなさい。
言いたいことがあるなら、
沈黙を守りなさい。
世の中はそのように動かすものです。
もしあなたが、
両手に抱えきれない程の果実を
収穫したいなら、
是非そうして下さい。

自らの性善性を第二の天性へと高めるには、
陰徳が最も効果的です。
相手に知らせず、心からの善なる思いで、
その人の為に黙々と善行を続けていけばよいのです。
その行為を自己正当化の道具にしてはいけません。
そんな「誰も知らない秘密」があればあるほど、
あなたの心は菩薩に近づいていきます。

この世界を仏国土にするには、
あなた自身があらん限りの善なる思いを、
周囲に放射拡散していけばよいのです。
周りの人達もまた、
その人なりの精一杯の善意を、
周りに放射していくでしょう。
各自の資質や能力など関係ありません。
心からの善意が相互に感応道交すれば、
目の前に極楽が現れます。

パニックで動いてはいけません。
あなたの判断は、
一瞬の感情のゆらぎに左右されていませんか?
先入見に基づいているのではありませんか?
重大な判断であればあるほど、
貪り、慢心、恐怖、不安、怒り、嫉妬、無知から生じる
感情を抑制し、
智慧と慈悲にあふれた心で判断しなくてはなりません。

コロナ危機は私達に、
世界を少しだけ深く見せてくれています。
絶対的安定がいかに脆く崩れ落ちるか。
壊れたものは二度と戻らず、
それでも世界は継続していく。
心の支えだったものの脆弱さを知り、
今や依存できる何もないという恐怖に、
心が震える。
私達は今、存在の暗い深淵を覗いているのです。

昨日までの平穏な日々が、
今日に繋がらず、
今日の予定調和が、
明日には否定される。
存在に内在する本源的性質の
一つである「無常性」は、
私達の思惑など意に介さず、
不可逆的に変化流転を続けていきます。
凡夫はそれによって苦しみ、
聖者はそんな世界に見切りをつけて、
彼の岸に至ります。

「身を守る」とは、
自らに対する「今この瞬間の気づき」を、
継続することです。
破壊的な現象はどのように起こるのか?
煩悩への耽溺を、
ほんの一瞬だけ自分に許してしまうこと、
そこから一切の苦が始まります。
故に「今この瞬間への気づき」の継続だけが、
我を守り他を守ると説かれるのです。

業果は、たとえそれが破滅的なものであっても、
最初は静かに平安に訪れると、
アビダンマは教えています。
今回のウイルスも特に注目を集めることなく、
地球の片隅で秘かに発生しました。
このパターンをよく記憶しておきましょう。
将来私達を襲いうる不善果も、
たいていこのように始まるのです。

他者の死を前提とし、
その死を期待しつつ、
自分の繁栄を求めてはいけません。
自ら地獄に堕ちることになります。
他者を没落させるための、
計画を立ててはいけません。
自らが没落します。
不善な意欲で得た利得は、
必ず数年で色あせます。
さらに晩年は苦しみ、
死後は四悪趣に堕ちていくのです。

怒りと嫉妬の潜在的傾向性は、
心底に蓄積され、
幸せになる為のあなたの計画を、
破壊します。
煩悩の爆発は危険な蜜の味。
炎に飛び込む蛾のように、
破滅的な至福に我を忘れるのです。
何と理不尽なことか!
あなたは「救われない」人に
なってはなりません。
怒りを抑制し、幸せになってください。

とても寒い夜、
暖房をつけることで命が救われる ー
しかしそれは、
国が公共インフラを安定供給してくれている、
あなたが公共料金を支払っているという、
二つの非常に脆い条件の上に成立しています。
一事が万事、
私達の生存を保証してくれる諸事は
実は脆いのだということを自覚していきましょう。