どんな現象も相互に依存し合い、
相互に執着し合い、
相互に支え合い、相互に剋し合っています。
如何なる影響も受けず
独立して意のままに存在することはできません。
私達人間もはかない現象です。
愚かさの故に苦の種を蒔き、
生死の輪廻をあてなく旅し、
死んで死んで死んで、
なお苦しいのです。

ある現象について
A. 生ずる原因と条件が揃った時に生じ、
B. 一瞬たりとも常態を保たず変化流転し、
C. 消滅する原因と条件が揃う時に消滅するなら、
このABCの性質は「縁起」と呼ばれ、
その現象は縁起に依存している、と説かれます。
人生で遭遇する現象で
縁起に依っていないものはありません。

では一切の心的現象や物質的現象は
縁起に依存し左右されるのですか?
その通りです。
では縁起に依存しないリアリティは
ないのでしょうか?
縁起に依存しない唯一つのリアリティ、
それが涅槃、Nibbānaです。
そこにはもはや一切の心的・物質的現象はなく、
静寂な甘露の至福だけが永遠に続きます。

渇愛は輪廻転生する養分です。
それは今生の私達の命の最深部を
赤く染めるだけでなく
まるで毛細血管のように
日々の何気ない言動の隅々まで行きわたり、
ある時はみにくい貪りへの執着として、
ある時は積極的な生の肯定の感情として、
その有無を言わせぬ強制力で
私達の心を自在に操るのです。

ひとたび無常と無我の真理を了知すれば、
渇愛が貪り握りしめていた欲望の対象が、
藁草のように価値のないものであることを
悟ります。
心にその藁草を厭い離れる想いが生じ、
苦が消滅します。
苦が消滅すれば、私達の不動の心は
圧倒的な歓喜と至福で満たされるのです。
それが仏教の最終目標です。

しかし無常と無我という変えがたい真理の故に
渇愛はその欲望の対象を
永久に所有し楽しむことはできません。
そして私達は苦しむのです。
これが世尊の説かれる苦です。
この苦を終焉させるためには、
瞑想の深い智慧によって、
覆いかぶさる無明を看破し、
無常と無我の真理を見抜くことが必要です。

人はそれぞれ自分なりの仏教実践法があります。
十人いたら十通りのやり方があるのです。
「修行者はかくあるべし」という先入見で
自らをその鋳型に当てはめる必要はありません。
ダンマを学び、瞑想を学んだら、
先ずは自分の生活に仏教を
矛盾なく有機的に溶け込ませる方法を
考えてみましょう。

仏教が日本に伝来したとき、
我々の先人達はそれをそのままの形で
受け入れることはせずに、
日本の伝統文化と融合させることに
留意しました。
そうしなければこの国で
仏教が末永く生きることが
できないと知っていたのです。
その結果、世界で最も繊細で奥深い
独自の仏教文化が花開きました。

私達の場合も同様です。
受け売りと表面的模倣は
長くつづきません。
あなた自身が培ってきた土台の上に、
仏教を花開かせなくてはなりません。
あなた自身が、あなたなりの仏教を、
育てていかなくてはならないのです。
私は僧伽に画一性を見たいのではなく、
色とりどりに咲く、多様な花々を
見たいのです。

ひとは刺激的感覚対象を追いかけ、
それを手に入れる事を期待し、
ついに入手した時大きな喜びを得るのです。
ちぎれるほど尾を振る犬の喜びと同様
喜びの対象は常に少しだけ未来にあり、
心はせわしなくそれを求めます。
聖者は今この瞬間の中に
無上の至福を見出します。
故に心は静かで平安です。

腹式呼吸はアナパナの準備行として
とても有効です。
入出息を丹田の僅かな前後運動に乗せると観じ、
如何なる摩擦も生じない息を探して下さい。
絹糸のような息が見つかるでしょう。
それは音を出す息(saddanavaka)ではなく
音を生じない八法聚です。
正念で八法聚を保てばアナパナは深まります。

心が沈み何に対してもやる気が出ない時、
人生が悪い循環に陥る前に、
他人のせいにする前に、
我を棄てて謙虚になりましょう。
謙虚さが感謝を生み、
感謝が受容力を生み、
受容力が感動を生み、
感動がインスピーレションを生み、
インスピレーションが
卓越したマニフェステーションを生むのです。

私達が瞑想や精神世界に興味を持つのは、
心が輪廻を超えて
ずっとそれを望んできたからです。
私達は精神世界と引き換えに
何かを諦める必要はないし、
私達自身を修行者のステレオタイプ
押し込める必要もない
という理法をどうか理解してください。
瞑想は私達を愛と自由と叡智にいざなう翼です。

私達は今生きているこの場所で、
大きく花開くことができます。
私達が子供の頃好きだったもの、
十代の頃熱中したもの、
将来の夢、好きだった音楽、
行きたかった外国、好きだったデザイナー、
習いたかった特技、ダンス、歌、
ミュージカル、心とろかす経験、
私達は何一つ諦める必要はありません。

好きだった物、やりたかった事、
そのすべてを矛盾なく一体化させ、昇華させ、
高次元で実現させる道こそが瞑想です。
ITの世界にも映画の世界にも音楽の世界にも、
実は精神世界に生きている賢者達が
少なからずいます。
さあ、机の上にあるカードをすべて使って
あなた自身の世界を創って下さい!